Matthew Herbert

One Pig

マシュー・ハーバート 「豚日記」

THURSDAY, 21 MAY 2009
プロジェクトの誕生

僕の名前はマシューハーバート
そしてこれが僕の豚のブログ

2010年に「The Pig」 というタイトルのアルバムをリリースする。(※正式には2011年8月『One Pig』としてリリースが決定。)
このアルバムは、ある豚が一生で発する音を使って作られる。
その豚の誕生の瞬間、生きている間、死を迎える瞬間、そして食用の肉として処理される場にも、僕は立ち合う予定だ。
その豚の肉はシェフに渡り
そこにはご馳走が用意される事だろう。
その全てが録音される。

そして音楽となる

こうしてる間、僕はケントにある農家からのその豚の出産の前兆を知らせる電話を待つ。そのとき僕はカメラとテープレコーダーを持ってそこへ急ぐ。

このブログで、僕のプロジェクトを見届け欲しい。

THURSDAY, 18 JUNE 2009
一匹逃す

しまったな。。。
家を離れてる間に豚が生まれたそうだ。
また次に生まれるまで数週間待たなきゃ
養豚所から声がかかるまでレコードに取りかかれないというのは変な(そして素晴らしい)感覚だ。

WEDNESDAY, 5 AUGUST 2009
まだ豚は生まれない

みんなからの質問に答えると、おれは事前に豚が生まれる24分から24時間前に知らせを受ける事になってる。

MONDAY, 17 AUGUST 2009
生まれた!

8月15日(土)に僕の豚が生まれたよ。

MONDAY, 17 AUGUST 2009
豚が生まれた。

僕が到着した時、既に2匹のメスの子豚が生まれていた、ただまだ二匹おなかに残っていて、その瞬間に立ち会う事が出来た。オスとメスだった。
母豚はこの出産が初めてだった為か、何をすべきか解らない様なそぶりで, 不快そうでもあった。
母豚は胎盤を体外に排出した、僕はさらに一時間待ったが、全ての出産が終わったと気づき、その場を離れた。
この母豚の姉妹が数日前に17匹出産していてそれと比較すると4匹の出産と言うのは少ない。

次の日、その母豚と新しく生まれた子豚を訪れた。実は僕が母豚のもとを離れて数時間後にさらに7匹の子豚を生んだようで、合計11匹。そのうちの1匹は母親に口で持ち上げ投げられた際にあごの骨を折ってしまい、食事が取れず生存する可能性が低いとみられる。さらにこの母豚は僕が出産に立ち会った子豚のお尻を噛んで出血させ、アザもできた。子豚達はどれも同じ様に見えるから特徴が出来て良かったと言えば良かったのかも…。

THURSDAY, 20 AUGUST 2009







写真クレジット:ルーシー ポープ 6日目
僕の豚は母豚に噛まれたせいで、尻に黒い三角形のアザがあるやつだよ。

SUNDAY, 11 OCTOBER 2009
豚が離乳を始めた







母豚は子豚達から隔離され、離乳が始まった。
子豚には別の大きな小屋が空くまでの数週間ここで餌が与えられる。
真ん中の写真で指差している豚が僕の豚だよ。

SATURDAY, 19 DECEMBER 2009
豚が新しい小屋に移った





みんなごめん。スタジオ作業が忙しくて、しばらく更新出来なかった。 この間に農場内の丘のてっぺんの小屋に豚が移った。
ここには他の豚達もいてかなり賑やかだ。
豚はまだ兄弟と一緒にいるんだけど、性格も癖もそれぞれ違っていて、上手く構成された家族のようだ。
この豚はあと6週間の命。巨大な養豚所の豚と比較すると、運動量も多く、与えられる餌も制限されている為、かなり小さく見える。
巨大な養豚所の豚なら今頃既に殺され食料にされている。
携帯のカメラのクオリティーも低いし、夕日が沈む頃だったから写真が暗くなってるのは勘弁して欲しい。

TUESDAY, 26 JANUARY 2010
最後の日々

2月8日に豚は殺される。
最後の数週間だ。

TUESDAY, 2 FEBRUARY 2010


写真クレジット:クリス フリール

MONDAY, 8 FEBRUARY 2010
食肉処理場

とても苛立たしいが、数回に渡り電話での交渉を試みたものの食肉処理場内の録音をする事は不可能だった。
実は録音の許可をしてくれた農家を見つけたものの同伴の獣医が認めなかった。

オレにとって死はこのプロジェクトにとって重要で、一番望まないプロセスでありながらおれが理解する豚の一生にとって一番強く関連している部分であると感じる。この事には後日ブログで触れたいと思う。

次のステップになるが、この夕方豚は肉として処理される。

WEDNESDAY, 10 FEBRUARY 2010
一匹の豚の一生が終わりを告げている

いま豚が死んだ

THURSDAY, 4 MARCH 2010
PETAへの回答

PETAは『One Pig』に対して否定的である、その概要、

"真の才能や創造性を有する人であれば動物を傷つける事によって注目を浴びるような方法はとらないでしょう。
豚は好奇心旺盛で頭が良く、敏感な動物です。食肉処理場では恐怖心から豚達は鳴き叫び、全力で逃げようとします。
豚はマシュー・ハーバートを含め残虐性をエンターテイメントと捉える人々などより圧倒的に尊敬される価値が高い生き物です。"

これが僕からの返答です:

PETAのこのプロジェクトに対する主張に困惑している。特に"軽蔑"を示唆している部分。
僕が観察していた豚は小さな農家で生まれ、一生をその兄弟と共に過ごし、充分なスペースと空気に触れて、地域で育てられた新鮮な穀物で育った。25週間目に兄弟と共に殺されたが、大型の養豚所であれば20週間目だ。農主はこの農場で育てられる動物の事を大事にしているし、この農場では地域の住人が動物とふれあう事もできる。ただ、それでも農家であり、豚は肉として育てられた。僕はそれを変える為にそこにいたんじゃない。僕は豚の飼育に関しては無知で、農家にそれを教わりに行っていたつもりであって、何も別の目的があっての録音じゃないし、農家のあり方に異議や改善策があってそれを農主に押しつけたい訳ではない。
養豚所の豚は常に死を前提にした存在で、僕にとってその瞬間に向き合わない事は自分や
この音楽を聴く人々から家畜を育てる事の真実から目を背けさせる事になる。
世界的に標準になりつつある生産性を追求した残酷な大型養豚所の存在は知っていた、ただそこから許可を貰うのは困難だから、
より良い家畜手法に目を向け焦点を当てる事にした。
英国における食品管理のシステムはとても秘密主義で、保管方法や家畜の飼育環境、処理加工方法に関して一般に知る権利が与えられていない。
それを理由に豚の死の録音が出来なかった。そしてそれが憤慨するべき点だと思う。飼育環境を知る権利を与えられるべきではないだろうか?
自分たちの体に入れる物がどのような方法で生産されているかを知る権利が無くてはならないのではないだろうか?

おれは肉を食べる。年を重ねるにつれてその事が嫌になる、ただ肉を食べるからには、その決断をとる上での責任があると思う。
自分が生まれてからの成長過程を見届けた豚の死を見るのは辛い事だけど、それは同時に重要な事だと感じる。
このPETAのプロジェクトの歴史や動機を考慮しない反射的な非難は不条理だと感じる。
この豚の一生はどこか遠くの食物連鎖の中ではあるが、ちゃんと尊敬を持って、正確に認知されている

PETAは勿論まだこの音楽を聴いていない、そして独自の解釈をもってエンターテイメントとみなした。

PETAの書いた、注目を浴びようとしているという部分は正しい。しかしそれは動物を痛めつける事ででは無く、リスナーを引きつける事によってだ。
矛盾の多いいシステム基で継続的な社会を築く事は出来ないという事に注目したい。檻に入った優雅な生き物のいる動物園内のカフェで、豚の成長過程を知らずに、ハムサンドイッチを食べるべきではないのだ。子供に最悪の環境で育った色んな動物の肉片が砂糖と塩で固められたものを食べさせて、食品会社の利益に貢献するべきではないのだ。アメリカでは食摂生の悪化に伴い、一部の地域で初めて子供の平均寿命がその親を下回るという状況が発生した。マリオン・ネスレの著書 「Food Politics」によればアメリカの食製品に使われる7万5千の化学物質の内の10%以下しか安全性が認められていないそうだ。結果を理解せずに食事をする事を直ちに見直さなければならない。

僕の住む英国では政府が食品管理をスーパーマーケットに任せている。第二次大戦以後、食料輸入品が最も多い現在にスーパーがその管理をしているんだ。このシステムは国の恥であって、消費を優先させ、消費者を国産品さらには国内生産者から遠ざけている。それはアパレルなどにも同じ事が言えるし、環境だって人権問題だって僕たちの消費の為に他の国を犠牲にし、主犯にして距離を置いてる。それは僕たちに消費の結果が生み出す影響を目の当たりにさせない様になっている。企業が利益を追求出来るシステムを生み出している。
もし僕が公共における死を虐待としか受け入れない国やPETAによって僕が豚の死を見届ける事が妨げられている状況は、
今一番必要とされている持続的で積極的干渉が行われる社会とは創造以上に遠いものだ。

僕は芸術と音楽は挑戦を支持するものだと考えていた。芸術と音楽の中核にあるのはいまある時代の流れの中で苦しむ事では無いだろうか?
しかしPETAが芸術家や音楽家に求めている事は静かに廃頽したシステムを見過ごし、
その問題が巨大化しているのに、その陰で沈静化するのを見守る事なんだよ。

MONDAY, 16 AUGUST 2010

明日豚を食べる。

TUESDAY, 2 NOVEMBER 2010
音楽への変換

豚は今音楽になろうとしている
2011年の春に、もう一度あの豚を聴くことができる
(実際には2011年秋に『ONE PIG』としてリリース決定)

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